< 美術館設置趣意 >
インターネットの教育利用を考えるにあたり、本校では端末を1カ所にまとめる
のではなく5つの研究室に分けて設置を行った。(地学、物理、地理、英語、美術)
確かに個人レベルの情報収集ツールとしてのインターネットの機能にはすばらしい
ものがある。しかし、それを教育現場で活用していく方法となると無限の可能性が
ある代わりに、スタート地点をはっきりと確認しておかないと学校教育本来の重要
な役割を見失ってしまう危険性をはらんでいる。教育現場には、とても高くて越え
にくい「壁」がいくつもある。学校が閉鎖的であると言われる根本原因であろう。
こういった共同のプロジェクトを抱えるとそのいくつかの「壁」がじゃまをするこ
とが多々あるが、今回はあえてその「壁」の中からスタートすることが重要である
と考え、分散設置に賛同をした。実際、授業の隙間でその他の仕事にあたるという
我々には、やりやすい形態であった。
教科間の壁、学年の壁、ホームルームの壁、分掌の壁と校内にも様々な壁がある
が、学校間の壁ほど高いものはないだろう。一般的に「学校」という名前でまとめ
られてしまうが、その中身は、全くさまざまである。違う人間がやっているのだか
ら当然のことであるが。とはいっても、他校がどんなことをしているかなどという
ことは、全くと言っていいほどわからない。なかなか交流を持つ時間と機会がない
からである。また、高等学校は義務教育ではない。従って、受験生の側には決めら
れた範囲内ではあるが受験する高校を選択する権利がある。今後、長年続いた偏差
値による受験校の決定から、それだけではない学校ごとの個性的な教育実践をもっ
と重視する受験校の決定という方向に変化していくことが望まれてくるのではなか
ろうか。つまり、我々教員にとっても、親にとっても、進学を希望する生徒にとっ
ても、在学している生徒にとっても、もっと学校に関する情報が手軽に入手される
べきなのである。むろん、何でも全て出すべきだといっているわけではない。お互
いプラスになると考えられる情報をである。といった理由からホームページの開設
を考え、美術・工芸の立場からは、高等学校らしいスタンスの美術館を設置するこ
とにした。
内容は、授業で制作された作品の提示を中心に、本校の年間指導計画、生徒作品
から学びとれること等、私自身が他校の様子で知りたいと思うようなものを掲載し
ていきたい。他校でどのような実践を行っているかなどということは、生徒の作品
をみれば一目瞭然なのだが、先にも挙げたようになかなかそのような機会をもてな
い。特に芸術科のように、1校に教員が1人というような科目はなおさらである。
しかし、WWW上でこのような情報が公開されていれば、教材研究の一助となるこ
とは確実であろう。日本に限らず、世界の学校の様子もつかむことができ、まさに
時間の壁を飛び越えることが可能になるのである。常日頃、教材の重要さを感じて
いる我々には学術情報としての教材を説いていく義務がある。今回、本校では全く
の偶然からインターネットによる研究を行う機会を得たが、現時点では各学校に一
般的に普及しているものではない。これからはぜひ、各地方の公立学校に設置でき
るよう行政側のインターネットの重要性の認知に期待をする。我々も、インターネ
ット自体に使われないように気をつけながら研究を進めていきたい。
東京学芸大学附属高等学校 美術・工芸科 遠藤信也
美術館表紙