6 情報授業の評価
 現在、2学期までの授業を終えた段階ではあるが、今年度の情報の授業をカリキュラム、指導体制、授業環境の3点について評価する。

6-1 カリキュラム
 4-1で挙げた、目標および目的がどれだけ達成されたかを見ることにする。表6-1に1学期の生徒の評定分布を示す。

表6-1 1学期の評定分布


 この表から、10段階評価で8以上の生徒が約85%を占めていることがわかる。この評価は、各時間ごとに課される課題の提出状況によってつけたものであるが、ほとんどの生徒が課題をこなしていると言える。現時点で、2学期の評価はまだ出ていないが、生徒の学習状況の観察および、生徒の提出した作品等からほとんどの生徒が、基礎的な情報活用能力を身につけたと考えられる。また、アンケートの「情報授業の感想・要望」の自由記述(資料2参照)からも、「21世紀を生きる僕らにとってとても必要なものなので、これから必要な知識を学んでいきたい」、「とても役に立つと思います。」、「あまりパソコンに興味がなかったのだけれど、理解するにつれておもしろくなってきた。」等(資料2参照)、授業内容を支持する声が多かった。以上3点から、4-1で述べた情報の授業の目標はほぼ達成できたと考える。
 しかし、「課題が多すぎる」、「用語などわからないのでもっとくわしく教えてほしい。」、「ガイドブックがほしい」等(資料2参照)の指摘もあった。また、今年度は協力依頼によって行った授業がいくつかあったが、そのため、授業の一貫性に欠ける点があったと考えられる。これらは、次年度に向けての検討事項としたい。
6-2 指導体制
 5の生徒へのアンケートの章でも見たように、生徒は個別指導のできるTTという授業方法を好意的に受け止めており、TAについても教官よりも年齢的に近く、気軽に質問できるとして評価している。
 情報の授業を担当する教育工学委員会の教官は、これまでにほとんどTTを経験したことがなかったが、2学期間のTTによる授業をした教官の立場から、情報授業におけるTTという指導方法を評価した。
 TTによって得られた成果を以下に挙げる。
・生徒に個別に対応でき、きめ細かいサポートができた。また、生徒の様子もよく把握できる。
 実際には、実習の多い情報授業を実施するには、複数の教官で指導する以外の形態は考えられないが、わからないときにすぐにサポートが得られるので、生徒からもTTは支持されている。
・異なる教科の教官により、授業を企画・実施しているので、様々な発想がでて、授業の展開の幅が広がった。
 これは、授業の企画の段階でも、また毎回の授業でも異なる教科の教官が組んだことによる効果と考えることができる。
・他の教官の授業を見学する機会にもなり、お互いに刺激を受け、また、他教科の教官とのコミニュケーションが増えた。
 普段各教科の教官室に別れている本校の教官にとって、他教科の教官から様々な刺激を受けながらコミニュケーションを取ることで、情報の授業に限らず、自分の教科の授業や、ひいては学校運営にも良い影響が出るのではないかと考えられる。
 次に問題点だが、TTをする際の一番大きな障害は、教育工学委員全員が集まって打ち合わせをする機会を作るのが難しい点であった。教育工学委員が異なる教科で構成されていることや、他の分掌の会議が教育工学委員会よりも優先されがちだからである。また、その他にも、1人の教官で授業を行う際にはない問題も生じた。
・教育工学委員全員が集まる機会を作ることが困難である。
 これについては、電子メールのメーリングリストを利用することによってある程度解消していが、やはり委員が顔を合わせて話し合う機会をもっと多く持つ必要があると考えている。
・責任の所在が曖昧になることがあった。
 TTの間でもこの問題は生じたが、教官とTAの役割分担が曖昧になり、教官がTAに頼りすぎているという問題も生じている。

 情報授業のTTという取り組みは、われわれ教官にとって、得るものが大きい貴重な経験であった。それは、単に1クラスを複数の教官で担当することで、生徒に目が行き届き、教えやすくなったというだけに止まらない。新しい教科の内容を多くの同僚と議論しながら作り上げていくという作業は、非常に負担は大きいものの、創造的でやりがいのあるものであった。これは、本校の情報の授業が総合的な学習という側面も兼ね備えているからに他ならない。先に述べた問題もあるが、本校の情報の授業は異なった教科の多くの教官によって成立しており、今後もTTを継続して行い、これまでの反省を踏まえてTTのより良い運営方法を確立していくことがこれからの課題である。

6-3 授業環境
 授業で、1人1台の端末で実習するためには2教室に分散しなければならない点は、実習の多い情報授業では非常にやりにくいところであった。また、生徒数1000人以上に対して50台の端末の数では少なすぎる。これまで、教育工学委員(TAも含めて)のボランティアによる尽力で環境を整備してきたが、教官個人の負担とすることには限界がある。ネットワーク管理者の問題、端末の補充、ソフトウェアの充実等、確実な予算措置をして環境の改善、充実を図ることが早急に望まれる。