第55回校長BLOG
第2学期終業式 校長講話(要旨)
令和7年12月25日
2025年も残すところあとわずかとなりました。今年は、大阪・関西万博の開催や、大リーグでの日本人選手の目覚ましい活躍など、心躍るニュースがある一方で、自然界の厳しさを痛感する出来事もありました。日々のニュースが示す通り、私たちの周りでは、喜びも悲しみも絶え間なく生まれ、そして移ろい続けています。
今日の講話では、『平家物語』の冒頭の一節を引用します。
祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし
猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ
「諸行無常」とは、この世のすべては絶えず変化し、永遠に同じ状態ではいられないという真理です。これは現代社会においても、重要な示唆を与えてくれます。私たちが今持っている知識や技術、社会の仕組み、さらには「附高」という恵まれた教育環境すらも、決して永遠ではありません。
昨日の正解が明日には通用しなくなる。そんな変化の激しい時代において、私が皆さんに望むのは、「無常」を恐れるのではなく、それを当然のこととして受け入れる「しなやかさ」を身につけることです。私たちの学びは、常に更新され続けなければならない「通過点」であることを忘れないでほしいと思います。
もう一つ、心に留めてほしい言葉が「盛者必衰の理」です。かつて栄華を極めた平家が滅び去った根源には、自らの力や地位を過信した「驕り(おごり)」があったとされています。本校の生徒たちは、これまで様々な分野で優秀な成績を収めてきました。しかし、その成功に溺れ、自分の見えている世界が全てだと思い込む「独善」に陥った時、成長は止まってしまいます。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスが説いた「無知の知」のように、「自分はまだ何も知らないのではないか」と自らを問い直す「知的な謙虚さ」こそが、真の知恵への入り口です。自分の至らなさを自覚し、他者の声に耳を傾ける勇気を持つこと。それこそが、将来、変化し続ける社会を導く「真のリーダー」の条件であると私は確信しています。
『平家物語』の鐘の声は、「終わり」を告げるものではなく、「今、この瞬間をどう生きるか」という問いかけです。
3年生の皆さん、本校で過ごす時間も残りわずかとなりました。周囲に惑わされず、自分との対話を大切にしてください。驕ることなく、今やるべき事に集中してほしいと願っています。
1、2年生の皆さん、年末年始という大きな節目を活用し、これまでの取り組みを振り返ってください。自分を律する勇気を持ち、次なる一歩への準備を整えましょう。
変化を恐れない勇気と、自らを律する謙虚さ。この二つを胸に、新しい年を健やかに迎えてください。