SSH活動

SSH特別連続講座「宇宙人文学に挑戦しよう!」

本講座は,生徒が主体的に先端的な研究を進めその成果を発表するまでを一連の講座として実施するものである。本校においてこれまで 最先端の研究者の指導のもとに開発を進め施行を重ねてきた成果として,平成28年度より連続10回の特別連続講座として確立し,毎年さらに改良を重ねながら実施してきている。

宇宙人文学

宇宙人文学とは,宇宙技術と人文科学分野の融合を目指した新しい領域の学問である。京都大学を中心に研究が進められている。

宇宙の資産,たとえば軌道上の衛星から取得されたデータを利用すると,地上の起伏に富んだ複雑な地形を,コンピュータの画面上に3次元の画像として構築できる。真上からはもちろんのこと,東西南北からの鳥瞰図的な視点で観察することも容易になる。これにより遺跡と遺跡,あるいは史跡と史跡の位置関係や地理的な条件などを,マクロとミクロの視点から考察できる。さらには歴史上の地球温暖期における海岸線の3次元的な変化さえ自在に再現することが可能になる。

このように,最先端の宇宙技術を理解しさらにそれを人文学のさまざまな学問領域に積極的に利用していくことで,既知の事柄を再認識するときの裏付けとしたり,或はひょっとしたらこれまでは見えなかった多くの歴史的な出来事が、科学的な分析によって浮かび上がってきたりするかもしれない。 宇宙人文学はそんな魅力ある学問である。(中野不二男京都大学特任教授)

https://k-rondo.usss.kyoto-u.ac.jp

本校における10回の講座の実施概要

第1回 宇宙人文学概論(1)=1学期

テーマ:宇宙人文学とは
「宇宙人文学と何か」「通信のしくみ」などについての講義,上級生(2年生,3年生)から1年生に対してこれまでの研究成果の紹介

第2回 宇宙人文学概論(2)=1学期

テーマ:衛星データのダウンロードの方法の実際,衛星データの利用例
衛星データ(アメリカの人工衛星ランドサットのデータ)をダウンロードする方法,衛星データの加工方法などの講義,上級生による下級生に対するデータ処理方法の紹介と伝授

第3回 宇宙人文学概論(3)=1学期

テーマ:衛星データ加工技術の習得,地図データの利用および加工技術の習得
ダウンロードした衛星データを具体的に活用する方法,地図データを衛星データと合成する方法などの講義,次回の巡検についての講義,上級生による下級生に対するデータ処理方法の伝授

第4回 宇宙人文学巡検実習(1)=1学期

テーマ:日帰りで行ける関東周辺の特徴的な地域の巡検
これまで,大磯,平塚,湘南など日帰りで行くことができる本講座で学ぶ特徴的な場所に実際に講師とともに巡検。衛星データで得られる情報を現地で照合する方法,地図データの実際の活用方法の講習を実施

第5回 宇宙人文学巡検実習(2)=夏季休業

テーマ:宿泊研修で行ける関東以外の特徴的な地域の巡検
夏季休業を利用し講師とともに,2泊3日で,特徴的な土地を訪問し衛星データを活用する方法を現地で活用する方法を講習。宿舎に戻り実際にその場で得た情報をコンピュータ処理する実地指導を受ける。また,現地の資料館などで専門家の指導を受け研究に必要な情報収集。これまで,群馬,新潟,富山,長野などを巡検。

第6回 宇宙人文学各論(1) =2学期

テーマ:個人研究テーマの選定と資料調査,資料作り
巡検で得た情報や学んだデータ処理技術などを活用し,自らが興味を持つ個人研究テーマおよび研究仮説の設定に向けた個別指導,種々のソフトを活用して基礎データを作成。

第7回 宇宙人文学各論(2) =2学期

テーマ:個人テーマに基づく研究の推進(その1)
テーマに基づく研究の推進。個々の研究テーマについて研究を進め個別指導。研究論文作成。

第8回 宇宙人文学各論(3) =2学期

テーマ:個人テーマに基づく研究の推進(その2)
個々の研究の中間発表。他の生徒から質疑応答。指導者による課題の指摘と個別指導。

第9回 宇宙人文学発表準備 =3学期

テーマ:個人研究発表指導
ポスター発表に向けての資料作り。指導者による課題の指摘と個別指導。

第10回 京都大学研修(宇宙ユニットシンポジウム発表) =3学期

テーマ:京都大学宇宙ユニットシンポジウムでの研究発表と最先端研究研修

1 これまでの研究成果を発表し,最先端の研究者,大学教授,大学院生,大学生などから質問や講評を受ける。
2 最先端の科学者の発表の場に参加し,さらに公開シンポジウムに参加し,一流の科学者や専門家が集結する学会発表を体験する。
3 大学における研究とは何か(研究体制,研究内容など)を学ぶ。

これまでの研究発表テーマ例

  1. 衛星データを利用した神奈川南部の地形と東海道に関する検証(2018年度)
  2. 衛星データを利用した横浜市都筑区の遺跡に関する考察(2018年度)
  3. 衛星データ利用による紅葉の植生調査(2017年度)
  4. 衛星データによる忍城水攻めの考察(2016年度)
  5. 「蛇崩川」における災害の検証(2016年度)
  6. 備中高松城水攻めの状況(2015年度)
  7. 衛星データを利用した津波の被害と大津波記念碑との関係性(2015年度)
  8. 崖線の表面構造と湧水についての考察(2014年度)
  9. 衛星データによる貝塚の比較(2014年度)
  10. 更級日記から1000年前の地形を探る—宇宙人文学×地理実習—(2013年度)

活動の様子