校長BLOG

第39回校長BLOG

2022.10.28 中庭集会(感染防止の観点から放送による)

金融教育について

相変わらず新型コロナウイルス感染症は収束せず、インフルエンザ流行も言われる中、なんとか学習旅行を成功させたいと思っています。私自身の感染予防策は、ワクチン接種と手洗い厳守、会話や密集する場でのマスク着用、多人数での会食の自粛です。皆さんもかわらず予防に努めてください。

さて、今日の話は金融教育についてです。

2022年4月から、高校において資産形成に関する授業が必修化されました。

要は、高校生の皆さんに、「金融リテラシー」、お金を通じて社会や経済、将来の働き方等、社会で生活するために必要な知識や判断力を身につけてもらおうというものです。今年(2022.4)から成年年齢が18歳に引き下げられ、クレジットカードやローン等の契約が18歳から可能になりました。つまり、3年生の多くは、経済活動の主体となったのです。

お金は、あえてお金では買えないものがあるなどと言わねばならないほど社会では大事なものです。皆さんは、あまりバイトなどしていないことでしょう。これは、学校が学校生活を第一にしてほしいと願っていることもありますし、多くのご家庭の方針でもあるかもしれません。皆さんの多くは保護者の方から小遣いをもらいそれを使う、言わば純粋消費者の立場でしょう。したがって、お金に関しては体験するより先に学ぶ必要があります。

国際社会も日本社会も、グローバル化と反グローバル化、民主主義と権威主義、リベラルと保守など、いろいろな立場がぶつかり合い分断しています。このような状況で、お金に関して「ぼーっと生きていると」

大変な危機に陥ります。例えば、一昔前までは、銀行預金は安全でかつそこそこの利潤を生む便利な資産運用でした。しかし、急激な変化の時代では、銀行自体の存続も絶対的なものではないし、ゼロ金利の状況でインフレ状態になると預金は事実上目減りしていきます。少なくともインフレ率に見合った利率が得られなければ、資産を維持することさえできなくなるわけです。

さらに、お金は流通してこそ社会の役に立ちます。資産が何らかの形で企業等に投資されることにより、資本主義経済は成り立っているのです。日本では、今までは、個人の資産の多くは銀行を通じて社会に流通していたのですが、今後は株や債券等の形で直接的に社会で役立つことが求められています。

もちろん、リスクはあります。投資した企業等が倒産したら大損ですし、そこまでいかなくとも業績が落ちれば株等の資産価値は下がります。しかし、日本社会がうまく回っていくためには個人の資産が市場に出てくることが必要ですし、個人の資産を守るためにも市場に出ることが必要になる時代が来たということです。リスクからただ逃げるだけではより大きなリスクを負うことにもなりかねない。リスクを適切にマネジメントすることが大事です。

そのために必要なことは、お金について学ぶことです。騙されて大事な財産を無くさないためにも学ぶ必要がありますし、社会変動で目減りしないためにも学ばなければなりません。実は、私も金融関係は苦手で何も知りません。わずかな資産はほとんど銀行預金です。しかし、そのごく一部で約20年前に投資信託を2種類買い、放っておいたところ、片方は買ったときの価値を下回ってはいますが途中での配当を合計すると買ったときの価格を上回りかつ20年間の物価上昇を上回っていました。もう一方は配当を都度に受け取らず再投資するタイプだったのですが、こちらは価格が買った時を大きく上回っていました。安定した資産運用を目指すためには、『長期』、『分散』、『積立』ということが大事だそうです。

私自身もお金について学んでいきます。皆さんも是非お金について興味を持ち、学んでください。家庭科や公民科では特にお金についての講義があります。実は、金融庁の金融教育教材作成には、本校の家庭科桒原先生と公民科長谷川先生が関わっていらっしゃいます。

さて、今月の1冊、『1ドル札の動きでわかる経済のしくみ』、ダーシーニ・デイヴィッド、かんき出版。テキサスで使われた1ドル紙幣が、中国、ナイジェリア、イラクと世界を巡る中で、中央銀行の働き、鉄道、油田とお金の関係が語られる。本校で特別講義をしてくださったあの池上彰さんが監訳者です。一読を。