校長BLOG

第44回校長BLOG

令和五年度 卒業式

早春の気に満ちたこの良き日に、三百五名の卒業生の門出を迎えましたことは、学校としてまことに慶びに耐えません。本日は、ご多用の中、本校設置機関を代表して、東京学芸大学副学長・事務局長 坂本 淳一様、後援会・泰山会会長 川口 浩子様、同窓会・辛夷会会長 武田 佐知子様、をはじめ多くの方にご来校いただき、皆さんの卒業を祝っていただいております。有難うございます。

三年前の入学式では、新型コロナウイルス感染症の影響で、設置者も後援会も同窓会もご招待できませんでした。その上、保護者の皆様さえご来場いただけませんでした。国歌・校歌の斉唱もできませんでした。あの時に比べれば、今日の卒業式は、関係する皆様にご祝福していただく中での旅立ちとなります。心のもつれがほどける気持ちです。

まず、保護者の皆様に申し上げます。
本日はお子様のご卒業、本当におめでとうございます。本日に至るまで、本校の教育活動に深いご理解とご協力を賜りまして誠にありがとうございました。大切なお子様をお預かりし、教職員一同、精一杯取り組んでまいりましたが、行き届かなかった点も多々あったかと存じます。至らなかった点につきましては、この場をお借りしお詫び申し上げます。今後は、附高卒業生の保護者として、本校へご助言・ご指導を戴き、附高が現在と未来の生徒にとってさらに良い学校となるよう、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

生徒の皆さんは、今日を迎えることができた感謝を、是非保護者の方にお伝えしてください。皆さんを第一に思い、皆さんが憂いなく高校生活を送れるよう、保護者の方々は心を配ってくださいました。皆さんは十八歳となり、選挙権も持つ成人です。感謝すべき人に、きちんと感謝を伝えられることこそ立派な大人です。心は言葉にしなければ伝わりません。

さて、入学式では、コミュニケーションとデジタルトランスフォーメーションの話をいたしました。新型コロナウイルス感染症の影響で、コミュニケーションは阻害されるが、デジタル技術等でそれを乗り越える中で、新たなコミュニケーションの形が生まれるかもしれないと予想しました。アフターコロナの新しい世界で、真のリーダーとして活躍し国際社会に貢献するために、本校の三年間で、『一生学び続ける姿勢』と『学ぶ方法』を身につけてほしいと訴えました。

案の定、コロナ以降の社会は、特にコミュニケーションにおいて一変しました。デジタルトランスフォーメーションも進んでいます。例えば、学校と皆さんとのやり取りはBLENDというツールにより迅速かつ容易にできるようになりました。コロナ以前では、全生徒全家庭への連絡は、プリントの印刷と配布で大変な手間がかかったものです。さらに、オンラインならではの利点として、今まで授業や会議ではほとんど発言しなかった人が、チャット機能を利用して積極的に発言するという嬉しい状況もありました。

一方では、このパンデミックの間に急激に進化したAIにより、コミュニケーションにおける負の局面も明らかになりました。フェイクニュースをはじめとする偽情報や悪意ある情報の迅速かつ世界規模の広範な広がりです。このことは、国際社会の分断を加速しました。今まで権威あるものとされた情報ソースへの信頼が薄れ、自分の主張に近い情報のみを信じ再生産する人々の出現です。ポピュリズムの流れであり、一世紀前にスペインの思想家オルテガ・イ・ガセットが批判した社会の、大規模な到来です。独立した市民の論理より大衆の感情が優先される社会。世界は、経済的合理性による近代的なグローバル社会ではなく、血縁関係と言語によって定義される国民国家、アイデンティティによる社会へと移行しつつあるかにも見えます。イギリスのEU離脱、アメリカ大統領選、ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナでの戦闘、最新情報でのモルドバ親ロシア勢力によるプーチン大統領への支援要請と、一連の流れを感じます。

しかし、こんな時こそ、若い皆さんが頑張るときです。皆さんは、生涯学び続ける「姿勢」とそのための「方法」を身につけているはずです。この二つのツールを持って、国際社会に変革をもたらし、人々のために分断を解消させてください。分断を煽る側ではなく、社会を融和させる側に立ち、尽力してください。

そのためには、簡単には倒れない強さ(レジリエンス)と、努力を継続する持久力が必要です。社会を変えることは簡単にはいかない。長期間にわたる絶え間のない挑戦となります。しかし、この代価を払ってこそ、望ましい未来が作られるのです。社会のために貢献する人こそ、真のリーダーと言えるのです。

希望の大学を目指す時間、大学での学問の日々、社会人としての苦労の年月。その中では、好調の時だけではなく、困難な時、絶望感にかられる日もあるでしょう。しかし、その苦労の時間が大切なのです。その時間が人を成長させます。ヘンデルでもベートーヴェンでも、ヨーロッパの音楽家の伝記を読むと、周囲からもうだめになったと思われた失意の日々が、実はその音楽家の畢生の代表作を作曲した、人生における絶頂の時だったということがよくあります。

焦らず、慌てず、諦めず、したたかで柔軟な人になってください。努力を惜しまず、決してあきらめない、勤勉な楽天家になってください。そして、時には高校時代を思い返し、本校に遊びに来てください。我々教職員も、皆さんに負けぬよう、皆さんの後輩を支援してまいります。

結びに、卒業生の皆さんのさらなる成長と、ご家族の皆様のますますのご多幸とご発展を祈念し、そして現在の日本で多くの困難に立ち向かっている勇敢な人々にエールを送ります。

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