校長BLOG

第11回校長BLOG

感染症の終息・収束について

大野 弘

 

生徒の皆さん、保護者の皆さん、今日は。

入学式、始業式から2週間がたちました。生徒の皆さん、ご家族の皆さんお元気でお過ごしでしょうか。学校に来られない生徒の皆さんも、仕事が思うに任せないご家族の皆さんもご苦労されていることと思います。

今日は、私がこの新型コロナウイルス感染症(感染症名をCOVID-19というそうです)の終息・収束について調べたことをお話しします。日本やアメリカの技術雑誌、医学関係雑誌の情報で、元になる学術論文名も明記されていたので「今現在」としては確度が高い情報だと思います。

まずはここで使う言葉の概念規定から。終息と収束という言葉が使われています。ここでは、終息とは、世界中で感染者がいなくなり、一般人はその感染症について無くなったものと考えてもよい状況(もちろん国際的な感染症の専門機関では警戒は続けています)と定義します。天然痘などがそれです。収束とは、新たな感染者数が減少し、医療崩壊の危険性は去り、一般人が普通の行動ができるようになった時と定義します。収束状況であっても、地域によっては、またある時に、再び感染・流行が起こりえます。

ポイントはワクチンです。ワクチンが完成し世界的に供給されるまでは、終息はもちろん、収束もないでしょう。有効で副作用の少ないワクチンが開発されて普及し、ウイルスの変化速度も小さいと終息するかもしれません。しかし、ウイルスの変化速度が大きいと、昨年のワクチンではあまり効かないウイルスが発現し、新たなワクチンを開発する必要があります。普通のインフルエンザウイルスがこのタイプですね。したがって、インフルエンザは決して終息しません。しかし、その年に合ったワクチンを接種しておけば、感染しないか、感染しても重症化することを防げます。また、抗ウイルス薬(タミフル等)もあって、感染した時の重症化を防ぎ治療もできます。

新型コロナウイルス(ウイルス名をSARS-CoⅤ-2というそうです)も変化は速そうなので、最善のケースで、この普通のインフルエンザ同様ではないでしょうか。すなわち、ワクチンが完成して世界中で普及した時に、とりあえずは収束する。しかし、世界中どこかの地域、どこかの時期では、再び感染し流行も起こる。けれども、ワクチンもあるし(場合によっては抗ウイルス薬もあるし)パンデミックまではいかず、その地域、時期に、適切な行動制限(学校なら、学校ごとの学校閉鎖や学級閉鎖)をかければ収束する。

では、肝心のワクチンの完成予定はどうなっているのでしょうか。ワクチンの開発には普通5年以上かかるものだそうです。ワクチンの効果のシステムは、弱毒化したウイルスや死んだウイルスを体内に入れ、体内の免疫機構を活性化し、本物のウイルスが侵入してきたときに備えるというものです。その開発段階として、①まずワクチンとして使えそうなものを作り、②それが健康な人に悪影響を与えないことを臨床試験する(3か月くらい)、③それが患者に効くことを臨床試験する(6か月以上)、④そのワクチンを打った時にウイルスが入ってきても免疫機構が過剰反応(免疫増強)を起こさないことを臨床試験する(6か月以上)、の4段階があるそうです。④での免疫増強への対応検査は大事で、多くの開発中のワクチンで、免疫増強が起こり、ウイルス自体より大きな障害(例えば免疫機構の暴走によりひどい肺炎を起こす)を起こすことがあるそうです。

現状は、①と②がすみ、③にかかりつつあるそうです。そうすると最短であと1年はかかるということになる。これは緊急の状況なので最大限のスピードをもって手続き上の時間を極力かけないで行った場合です。

こう考えてくると、行動自粛は長引くかもしれません。また、完全な収束ではなくても、ある程度の行動再開はあるかもしれません。その時に備え、私たちの自宅での学習も充実させ、十分な成果を収めるようにしたいと思います。今、ネット上ではいろいろな情報が飛び交い、フェイク情報も多いようです。生徒の皆さんは、情報元を確認する、情報相互に矛盾がないかを確認する等の注意をして、確かな情報をもとに行動するようにしてください。

今週の一冊、辻邦夫、嵯峨野明月記、中公文庫。私は新潮社の布で表装したハードバックで持っていますが、極めて美しい装丁です。今はあまり読まれていない作家かもしれません。本能寺の変から徳川幕府開設にかけての時期、本阿弥光悦、俵屋宗達、角倉与一の3人が、それぞれの時代と自分のなすべきこととの間にどう折り合いをつけるのか。3人の声が、闇の中から呟き始めます。時代と自分を調和させた本阿弥光悦、周囲など一切かまわず自分の天性を最大限に発揮した俵屋宗達、現実と学問・芸術との狭間に迷い苦しんだ角倉与一。特に、光悦が至った「心意気しか残されていないところ」の心境は感動的だ。是非、ご一読を。

では、また来週このブログでお目にかかりましょう。お元気でお過ごしください。