第9回校長BLOG

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 生徒の皆さん、こんにちは。
皆さんにはしばらく会っていませんが、お元気でしょうか。新型コロナウイルス感染症への対応としての休業期間も2週間を超えてしまいました。この間、皆さんには、学習、行事、部活動等で不便をかけて申し訳なく思っています。
このような個人の力ではどうしようもない不条理の状況に対して、1人の自立した人間としてどのように対処すればよいのでしょうか。不運や不幸を嘆くことはできますが、それでは状況は改善されません。ピンチをチャンスに変える積極性を持ちましょう。
 そのために必要なのは、①現状を客観的に把握すること、②得られるものとリスクとのバランスを考えて行動を決定すること、③慎重かつ大胆に行動して、結果を評価することです。
 ① 現状は、まだまだ感染症は収まっていない。いつ収まるかの見通しは立っていない。したがって、感染を防ぐために、不特定多数の人間との接触は避けるべき状態です。
 ② 感染リスクを小さくするために、1人でできることで通常の活動に近い成果を出すことを考える。学習は、かなりの程度1人でもできます。与えられた課題に取り組んだり、参考書や問題集など自分で教材を準備したりしてもよいでしょうし、この機会に大分の本に挑んでみてもよいでしょう。囲碁将棋や音楽系の部活動なら一人でもある程度は練習できるでしょう。運動部ならランニングや筋肉トレーニングでしょうか。戸外でのランニングは感染のリスクは小さいし、自宅での腕立て伏せや腹筋運動は安全でしょう。チームプレーの練習ができない分、個人の体力・筋力をつけておき、団体での練習が再開された時に備えましょう。
 ③ 行った行動は、その成果をこまめに評価して改善していくことが必要です。漫然とやっていてはいけません。今日の学習はどれだけ進みどれだけの成果を収めたのか。10キロランニングをしたが足の痛みが翌日まで残ったので、ちょっとやりすぎで明日は休養日にしようとか…。意識的に行動することで、遣り甲斐もでき効率も上がります。
学校としては、日々感染症の状況を確認し、最善の方法を検討いたします。その結果はHP等で皆さんにお知らせします。まだ暫くはこの状況が続きそうです。危機の時を前向きに積極的に過ごしていきましょう。

第8回 校長BLOG

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令和元年度 第64回卒業証書授与式(3月2日実施) 校長告辞より

まず、皆さんにお詫びすることがあります。それは、今般の新型コロナウイルス感染症への対応のため、この卒業式を大幅に縮小せざるを得なかったということです。在校生も皆さんをお送りしたいと思って準備してきましたし、東京学芸大学の副学長をはじめとする先生方、泰山会役員の皆様、同窓会辛夷会の役員の皆様、学校評議員の皆様も参列してくださりお祝いしてくださることになっていました。さらには、附属世田谷中学校、附属竹早中学校、附属小金井中学校の各校長先生もご参列くださる予定でした。これらの方々からは、旅立つ皆さんに、くれぐれも頑張っていくようにとの、励ましとお祝いのお言葉を頂いております。そして、何よりも今日の日を喜び期待していた保護者の方々です。このようなことになってしまいましたが、皆さんが帰宅したら、是非、保護者の皆さんに、今日まで育てていただいた感謝を告げてください。気持ちは言葉にしてこそ伝わるものです。

さて、卒業生の皆さん、卒業、おめでとう。

皆さんは、私の同期生でした。私は、三年前の四月三日に学長より本校校長の辞令を頂き、四月六日に入学式で皆さんを迎えました。五月のこどもの国でのバーベキュー遠足、体育祭、林間学校ではただ一つ妙高山に登れなかった期として涙をのみました。皆さんが懸命に部活動に取り組む姿も目に浮かびます。二年生での学習旅行では、ソウルに行き、戦争博物館や新聞博物館の見学を選んだグループと行動を共にしました。知的好奇心旺盛な姿に、流石は附高生と思ったことでした。三年生での辛夷祭では、完成度の高い感動的な芝居を見せてもらいました。皆さんと共に歩んだ三年間は楽しく刺激に満ちた年月でした。

この三年間を通じて、皆さんは学問の基礎、学問の学び方を身に着け、自ら運命を切り開いていく生きる力を獲得しました。これらの力と経験は、今後の皆さんの危機の時に、皆さんを支え元気づけることと思います。

危機と言えば、今まさに日本社会は危機にあります。新型コロナウイルス感染症はここ一週間が正念場とのことです。このあたりはグローバル化の影の部分なのですが、感染症の伝播もグローバル化しかつ急速です。私たちは、過度に恐れることなく、合理的な判断のもとで、感染症に適切に立ち向かっていかねばなりません。

船出に当たっての危機の状況は、九年前の東日本大震災のことを思い出させます。あの時も多くの高校では卒業式を延期する等の措置を取りました。しかし、その中で、卒業生たちは、自分達が郷土を日本を立て直すのだという強い気持ちを持つようになりました。新型コロナウイルス感染症をはじめ未知の感染症を予防し治療するためには、医学を中心として生物学や化学の研究発展が必要です。さらには、危機において社会を混乱させないよう、経済学や法学をはじめとした社会科学の発展が必須です。ここにこそ、皆さんの出番があります。本校で学んだものをさらに発展させて、他者のために有意義なイノベーションを引き起こし、社会に貢献してください。本校の本物教育は、まさにそのためにあります。是非、ピンチをチャンスに変えてください。

そして、荒波の航海に疲れたら本校を思い出し、本校に立ち寄ってください。附高は、いつでも皆さんの良き風待ちの港でありたいと願っています。

さて、皆さんに勧める最後の一冊。イギリスの作家ダニエル・デフォーのロビンソン・クルーソー。そう、あのロビンソン、無人島に漂着し二十八年間の苦労の後、無事に故国イギリスにもどった男の物語です。皆さんの多くは、子供向けになった本で読んだのではないでしょうか。しかし、この小説はジャーナリストであり小説家であるデフォーの代表作であり、カール・マルクスやマックス・ヴェーバーが、その著書で起業家精神の象徴と評価している大変な代物です。無人島で、わずかな資産を効率的に使い成果を出す。山羊を飼ってバターやチーズを作り、穀物を栽培しパンまで作ってしまう。克明な日記をつけて長期的短期的な目標を管理する。勤勉でいて誠実、そして楽観的。まさにイノベーターであり理想的企業家です。マルクスやヴェーバーは簡単には読めないがロビンソンなら面白く読めます。是非、ロビンソンで資本主義の精神を学んでください。

結びに、卒業生の皆さんのさらなる成長と発展を祈念し、式辞といたします。

 

Bon voyage

 

第7回 校長BLOG

第7回 校長BLOG

本校の入試も終了した。多くの受験生が本校を目指してくれるのは有難い。その気持ちに応え、ますます本校を良い学校にしていきたい。

さて先日の中庭集会での話。私の話は短いことだけが取り柄と自覚し、かなり端折っていたので少し付け加える。

 

いろいろな機会に話してきたが、いよいよイギリスのEU離脱の時が来た。2016年の国民投票の結果である。EU内であれば通関手続き無しで関税無し、単一市場で貿易が進むし、人の移動が自由で諸国間の交流が深まる。ところが、移行期間を経て来年からは、これらが無くなる。イギリスにとって、離脱派の人たちの言うように「EUから離脱さえすれば明るい未来が開ける」のだろうか。主要国の一つが抜けてEUはどうなるのだろうか。

イギリス内の国際的企業が「出英国」の動きを進めている。EU内のイギリスだから生産拠点やオフィスを置いていたが、そうでなくなれば他のEU諸国に移すというのだ。当然イギリスの経済、雇用にとって痛手である。また、離脱派の人々はEUの拠出金が無くなればその分医療費や経済活性化に使えるとしていたが、どうやら離脱の混乱でGDPが下がり拠出金分を超える損失だという分析さえ出ている。

一方、EU側からすると、今までは5億人の巨大市場としてアメリカや中国と対峙してきたが、今後は域内第2の経済大国が外れるわけで、当然他の国や地域への影響力は下がるだろう。英独仏のトロイカ体制が独仏+伊になることで、内部の結束力がどうなるかも予断を許さない。

ヨーロッパは統合から再び分裂の時代を迎えるのか。そもそも世界も協調から分裂の時代を迎えつつあるかのような様相である。グローバル化の特徴は、協調と寛容と自由競争である。そこには光と影とがある。国家としての既得権益が無くなり、一部の階層には不利に働く。つまり、どこの国民であろうと、同一の能力・同一の努力に対して同一の報酬が用意される。遠く離れた場所で生まれた宗教も文化も異なった人々が、自分の競争相手になるのである。このような自由市場は、人によって有利にも不利にも働く。有利となる人々がグローバル化を推進してきたが、不利になる人々がそれを阻止しようとしている(自国第一主義もその一つ)ということだろう。しかし、私見では、最大多数の最大幸福という観点で言えば、グローバル化の方向は間違っていないし、不利になる人々への配慮を行いつつ進めていくべきだと思っている。

 

さて、もう一つの話題は新型コロナウイルス感染症、これも今燃え盛っている。私たちとしては、落ち着いて、しかし集中して取り組むことが必要だ。中国湖北省武漢市の市場で売られていた野生動物が発生源だといわれている。原因となるウイルスはRNA型のウイルスで変異しやすい為、動物から人に感染するように変異し、さらに、人から人に感染するように変異してしまった。人にとっては未知のウイルスなので免疫が無く、広範囲の伝染と重症化の恐れがある。

医学的に効果があると言われている予防法は、①徹底した手洗い。石鹸でよく洗い、さらにエタノールでの消毒が有効である。②感染しても発症しないように、栄養と睡眠・休息を十分にとり体調を整えておくこと。③万が一、熱や呼吸器疾患等の症状が出たら他に感染させないようマスクをする。④特に受験生は、不要不急の人込みへの外出を避ける。等である。

ところで、最近、発症していないのに感染していた人が複数発見された。感染拡大を阻止するためには、厄介な事態ではあるが、一方においては、感染しても発症しない人・ウイルスの組合せが出てきたことを物語る。毒性の弱いウイルスが出てきたのか、人の免疫システムが追い付いてきたのか。

因みに、生物学的に言って、毒性が弱いことは決してウイルスにとって不都合な性質ではない。毒性が強いと、宿主の生物がすぐに死んだり、すぐに動けなくなったりするためウイルスが他の多くの宿主に感染し増殖することができない。むしろ、宿主にほとんど悪影響を与えず有益なくらいの方が、自分が世にはびこるためには好都合である。人の腸内細菌やマメ科植物の根粒バクテリアなどまさにこれらの例であり、真核生物の細胞中のミトコンドリアなどこういった寄生生物の究極の姿だと言えよう。

それはそれとして、ヒトが生まれて以降、わけのわからぬ寄生生物による危機は数多あった。典型的なのは中世から近代にかけてのペストの脅威であり、ダニエル・デフォー(研究社・ペストの記憶)やアルベール・カミュ(新潮文庫・ペスト)の作品を読むとそのリアルな様相が理解できる。しかし、最近のケースが過去の事例と異なるのは、感染拡大の伝播速度でありその影響のグローバル化である。飛行機による人の移動、世界経済が一体化したことによる負の面がもろに出たと言えよう。いまや中国は「世界の工場」となっている(特に正に武漢市)ので、世界中にその影響が出ていて、日本やアメリカの自動車や機械生産への影響はもちろん、ついにはヨーロッパでも工場がストップしたとのことである。好むと好まざるとに関わらず、世界は狭くなり、国際的な相互関係は深まっているのである。

 

二つの話題の共通のテーマに気が付かれたことと思う。それは否応なく進むグローバル化の光と陰であり、一時的、限られた地域ではその動きに逆行できても、時代はそして世界はグローバル化の方向に進むだろうということである。であるならば、我々は、特に次代を担う生徒諸君は、どのように行動すべきか。影の部分を見なければ、ブレグジットやアメリカの状況のように、大きな抵抗にあい、それは最大多数の最大幸福に悖ることになる。グローバル化を進めるとともに、そのことにより不利益を被る人への最大限の配慮をしていかねばならない。未来を担う若者たち、頼んだぞ。

 

今月の1冊、フランスの経済学者 ダニエル・コーエンの「経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える」、経済史的資料から現代社会と近未来を読み解く、主義主張からではなく、統計的事実から出発して物事を考えることを学べる。